ポケカを飾るときの注意|光と湿気、立てて置くときの傷
カードを飾るとは、しまっておく代わりに見える場所へ置き、日常的に光と空気へ触れさせる状態をつくることです。結論から言うと、飾ることと保管することは求める条件が逆を向くため、光を弱める、温度と湿度の変化が小さい面を選ぶ、飾る期間を区切る、という三つで折り合いをつける形になります。国の文化財の公開について定められた指針でも、照度の上限と年間の公開日数の上限が組み合わせて示されており、光を弱めることと当て続けないことの両方が前提に置かれています。この記事では、光、温度と湿度、置き方、期間という順に、家庭で飾るときに見ておきたい点を整理します。飾るものと手放す候補を分けたい場合は、カードごとの数字を相場データベースで確認してから決めると考えやすくなります。
飾ることと保管することは条件が逆を向く
しまうときは光を当てない、空気に触れさせない、動かさないという条件を満たしやすいのに対して、見せるときは光が当たる、ほこりが付く、出し入れが増えるという条件がついて回ります。飾るという行為は、この三つを引き受けたうえで劣化の速さをどこまで落とせるか、という話になります。
見せるものと動かさないものを分ける
そのため「飾ってはいけない」という考え方ではなく、「どれを、どこに、どのくらいの期間置くか」を決める作業だと捉えるほうが実際的です。すべてを同じ条件で扱う必要はなく、見せたいものと動かしたくないものを分けるだけでも負担は下がります。
分け方の起点になるのは、そのカードを今後どうしたいかという見通しです。長く手元に置くつもりのものと、いずれ手放す可能性があるものとでは、光に当てる時間の許容範囲が変わってきます。後者は保管側に回し、前者から飾る候補を選ぶという順番にすると迷いにくくなります。
未開封の箱は別の話
未開封の箱を飾る場合は、外装のフィルムや紙箱の色あせという別の論点が加わります。箱の形での扱いはポケカ未開封BOXの扱い方にまとめているため、単体のカードを飾る話と分けて読んでください。
光をどれだけ減らすかの目安
光の量の目安として参照できる公的な資料に、文化庁が定めている国宝・重要文化財の公開についての要項があります。そこでは照度を原則として一定の値以下に保つこと、直射日光が入る場所など明るすぎる場所での公開を避けることが示されており、さらに材質の区分ごとに低い値が置かれています。
家庭にそのまま当てはめない
注意したいのは、これが国宝・重要文化財を博物館などで公開する場合の基準であり、家庭で市販のカードを飾る場合にそのまま当てはまるものではないという点です。あくまで「光に弱いものはここまで光を落とす」という考え方の参考として読むのが妥当です。
| 区分 | 要項に示されている照度 |
|---|---|
| 原則 | 150ルクス以下に保つこと |
| 絵画/書跡・典籍・古文書/漆工品・甲冑類 | 100ルクス以下とすること |
| 染織品 | 80ルクス以下とすること |
| 近代の洋紙を利用した文書・典籍類、図面類、写真類など | 50ルクス以下とすること |
紙に印刷されたカードに近い性質を持つのは、この中では最後の区分にあたる近代の洋紙を使った資料です。つまり、紙もので新しい時代のものほど低い値が置かれており、光に対しては慎重に扱う対象として整理されている、という傾向が読み取れます。
測らなくても分かる手がかり
家庭に照度計がある例は多くありませんが、数値を測らなくても判断の手がかりはあります。窓からの距離、照明の真下かどうか、昼間に紙の上へ影がはっきり出るかどうかといった見え方で、同じ部屋の中でも条件は大きく変わります。
照明の種類で変わること
紫外線が出なくても明るさは減らす
同じ要項では、蛍光灯を使う場合は紫外線の防止のためたい色防止処理を施したものを用いること、白熱灯を使う場合は熱線の影響を避けるよう配慮する必要があること、紫外線や赤外線の出ないLED照明を使う場合も照度の原則は同様に扱うことが示されています。紫外線が出ない照明であっても、明るさそのものは減らす対象だということです。
国立国会図書館の資料保存の案内でも、光のエネルギーは資料のさまざまな化学的劣化を進行させると説明されており、低紫外線タイプの照明の導入を進めていることが記載されています。あわせて、書庫の照明は通路を除いて通常は消灯し、資料にできるだけ照明が当たらないようにしているという運用も紹介されています。
弱める、短くする、当てない時間
ここから取り出せる考え方は三つです。当てる光を弱める、当てる時間を短くする、当たらない時間をつくる。家庭では、直射日光を避ける、窓から離す、見ないときは部屋の照明を落とす、といった形に置き換えられます。
なお、どの照明でどれだけ退色が進むかを家庭の環境で見積もることはできません。退色や日焼けの跡が査定でどう見られるかという観点は買取の状態ランクの見方で扱っているため、飾る候補を決める前に目を通しておくと判断しやすくなります。
温度と湿度は置く面で変わる
国立国会図書館の温湿度管理の説明では、劣化や虫菌害を抑えるためには低温低湿で変動のない環境が望ましいとされ、湿度が恒常的に高い状態が続くとカビが発生する確率が高まると記載されています。あわせて、一年を通じても一日の中でも温湿度を急激に変動させないことを目指している、という方針が示されています。
温度が下がると湿り気が増える
温度と湿度は独立した数字ではありません。同じ水蒸気量でも、温度が高いほど相対湿度は低く、温度が低いほど相対湿度は高くなるという関係が説明されています。冷える時間帯に湿り気が増えるのは、この関係によるものです。
家庭に置き換えると、窓際、照明の直下、エアコンの風が直接当たる位置、外壁に接する面は、いずれも一日の中で条件が動きやすい場所にあたります。飾る場所を選ぶときは、見栄えと同時に「一日の中でどれだけ条件が動くか」を見ておくと差が出ます。
濡れたりカビが出たとき
湿気が続いた結果として起きることへの対処は、予防とは別の手順になります。実際に濡れたりカビが出たりした場合の初動は濡れた・カビが出たカードの扱いにまとめています。日常の保管環境の考え方はポケカの保管方法完全ガイドが基本になります。
立てて置くときに起きる傷
飾るときは立てて置く形が多くなりますが、立てるという置き方には固有の負担があります。下の縁に重さが集まる、支えの角が当たる、台の上で滑る、取り出すときに表面へ触れる、という四つが起きやすい場面です。
縁に荷重が乗り続ける
下の縁に重さが集まる点は、時間をかけて効いてきます。薄いカードを支えのない状態で長く立てておくと、縁の一部だけに荷重が乗り続け、わずかな変形として残ることがあります。全面で支える形にするか、寝かせ気味の角度にするかで力の集まり方は変わります。
参考として、先ほどの要項には巻物などを鑑賞の便宜のために傾斜台上に置く場合、原則として傾斜角度を水平角30度以下にするという定めがあります。対象は巻物であってカードではありませんが、立てるより寝かせるほうが一点への荷重が分散するという考え方は共通しています。
出し入れの回数も増える
取り出すときの接触も見落とされがちです。飾っているものほど人に見せる機会があり、出し入れの回数が増えます。保護具を付けたまま扱うか外すかの判断は保護具を付けたまま出すかどうかで整理しています。
ケースと台を選ぶときの見方
要項では、展示ケースのガラス等は十分な強度を有し飛散防止措置を講じたものを使用すること、移動できる展示ケースは重心を低くし横滑りなどの防止措置を施すことが示されています。倒れないこと、割れても飛び散らないことが先に置かれている点は、家庭でも同じ発想が使えます。
素材によっては風を通してから
もう一つ、ケースの素材についての記載もあります。文化財に悪影響のあるガスを発生するおそれのある素材や接着剤等を使用する場合は、使用量や通風乾燥期間を適切に設け、定期的にケース内の濃度を確認することとされています。買ってすぐの密閉容器に入れる前に、しばらく風を通してから使うという発想につながる部分です。
| 置き方 | 起きやすいこと | 見ておく点 |
|---|---|---|
| 壁に掛ける | 面によって日照が大きく違う | 直射日光が入る時間帯があるかどうか |
| 棚に立てる | 下の縁に重さが集まる | 全面で支えられているか、滑り止めがあるか |
| 平らに置く | ほこりが積もりやすい | 上から物が置かれない位置かどうか |
| ケースに入れて置く | 中の温度と湿気がこもる | 密閉の度合いと、置く面の温度変化 |
鑑定済みのケースに入ったカードを飾る場合は、ケース自体が傷や曇りの対象になります。ラベルの向きや積み方を含めた扱いは鑑定済みケース入りカードの扱いにまとめているため、そちらとあわせて読んでください。
製品ごとの使用条件を見る
なお、どの製品が適しているかを一律に決めることはできません。同じ形のケースでも素材や密閉の度合いが異なり、置く部屋の条件によって向き不向きが変わるためです。製品の説明にある使用条件を確認したうえで選んでください。
飾る期間を区切るという考え方
要項でもう一つ特徴的なのは、明るさだけでなく期間にも上限が置かれている点です。原則として公開日数は年間延べ60日以内とされ、たい色や材質の劣化の危険性が高いものは原則として年間延べ30日以内とし、他の期間は収蔵庫に保管して温度及び湿度に急激な変化を与えないようにすることとされています。版画のように、日数と照度の両方が低く置かれている区分もあります。
出しっぱなしにしない回し方
家庭でこの日数をそのまま守る必要はありませんが、「ずっと出しっぱなしにしない」という運用そのものは真似ができます。飾る期間を決める、戻す場所を用意する、戻して点検する、別のものと入れ替える、という四つの手順にすると回しやすくなります。
入れ替えを前提にすると、戻す先の保管環境が必要になります。置き場所をどう作るかはカードをファイルで整理するや、自宅以外に預ける場合の自宅以外にカードを置くときの考え方が参考になります。
環境が変わったら慣らす
もう一点、要項には輸送してきたものの梱包を解くときに24時間程度の慣らしの期間を確保することという記載もあります。環境が急に変わる場面では、開けてすぐ扱わないという選択肢がある、という点は覚えておくとよいでしょう。実家から持ち帰った箱をすぐ開けるかどうかを考えるときにも同じ発想が使えます。
やってはいけないこと
飾る場面で起きやすい失敗は、どれも後から戻せない性質を持っています。直射日光が入る窓際に置いたままにすること、粘着のあるもので直接留めること、飾るために保護具を外したまま長く置くこと、戻す場所を決めずに出すこと、この四つは特に避けたい操作です。
粘着で留めない
粘着で留める方法は、外すときに表面の層を持っていくことがあります。跡が残った場合、状態としての評価に影響する場合があり、元に戻す手立てもありません。固定したい場合は、粘着に頼らず支えで押さえる方法を先に検討してください。
手放す可能性があるものを長く飾り続けることも、選択としては慎重に考えたほうが無難です。光に当たる時間が長いほど、退色が進む可能性は上がると考えられているためです。判断に迷う場合は、飾る候補と保管する候補を一度書き出して分けてみてください。
持ち出すときは別の論点
持ち出して見せる機会がある場合は、移動中の扱いが別の論点になります。イベントや対戦の場へ持ち出すときの考え方は大会・イベントにカードを持ち出すときに、引っ越しで運ぶ場合は引っ越しでポケカを運ぶときの手順にまとめています。
まとめ|飾る前に戻す場所を決める
飾ることと保管することは条件が逆を向くため、光を弱める、条件が動きにくい面を選ぶ、期間を区切る、という三つで折り合いをつけるのが現実的です。公的な指針でも、照度の上限と年間の公開日数の上限が組み合わせて示されており、明るさと時間の両方が見られていることが分かります。
紹介した数値はどこまで当てはまるか
実際の劣化の進み方は、部屋の条件、照明、季節によって異なりますし、カードの状態も個体ごとに違います。ここで紹介した数値はいずれも文化財の公開についての基準であって、家庭のカードに直接適用されるものではない点にご注意ください。
飾る候補と手放す候補を分ける段階では、カードごとの数字が判断の材料になります。相場データベースで確認したうえで、長く手元に置くものから飾る対象を選ぶと整理しやすくなります。実家などに置いたままのコレクションから選ぶ場合は実家で出てきたカードの扱いも参考にしてください。
参考にした資料
参考にした情報は、文化庁「国宝・重要文化財の公開に関する取扱要項」、国立国会図書館「照明」、国立国会図書館「温湿度管理」です。いずれも文化財や図書館資料についての説明であり、市販のカードを対象にしたものではありません。
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